新幹線に乗るなり、大きなあくびが出てしまった。3人掛けシートに私を真ん中にして座る。真ん中だと寝るに寝れない。


「いえ、大丈夫です」


「本当ですか?じゃ、俺寝ますね。起こしてください。葵、肩貸してな」


田辺くんはカバンからアイマスクを取り出す。ええ?用意がいい…。


「おい、田辺。マジで寝るのか?」


「もちろんです」


「萱森さん、場所替えよう。俺、そっち座るよ」


「えー、葵の肩が…」


本気で私の肩で寝るつもりだったらしい…。


「俺の肩貸してやるよ。よだれ垂らすなよ。垂らしたら、スーツを弁償してもらうからな」


「そんな高い肩、いらないです」


田辺くんは窓側に座っていたから窓にもたれた。


「もう寝たのか?呆れるほど早いな」


「クスッ。ほんとですね」


私まで寝るわけにはいかないので、バッグから文庫本を取り出して広げる。

活字を見ると自然に瞼が…困ったな。眠気覚ましには…眠気スッキリのガムを口に入れた。