「藤沢くん、久しぶりだね」


「はい。ご無沙汰しております。今日はどのようなご用件で?」


藤沢さんが小島社長の前に立った。

銀プチの眼鏡が神経質そうに見えるけど、社長という貫禄がある。眼鏡の奥の目が鋭くて、何でも見透かせられそうな気がした。

小島さんの鋭い目は父親似なのかもしれない。親子揃って、怖いな。


「うん。ほら、例のバウンドケーキが評判よくてね、あれを含めた福袋的なものを作ってもらいたいなと思ってさ」


「小島社長。第一応接室を用意いたしましたので、そちらへどうぞ」


どこかに消えたと思った志田課長が戻ってきた。応接室が空いているか確認して、準備をしてきたようだ。


「ああ、志田くん、悪いね。応接室はどこだっけ?」


「ご案内いたします。こちらです」


率先として機敏に動く志田課長を初めて見た。普段はのんびりしていて、人任せだから、意外な一面だ。人が変わったように動くから驚きだ。