「偶然会っただけのヤツが何でここまで来るんだ?」


やっぱり突っ込まれる。だから、駅までで良かったのに。


「わざわざ送ってくれたんだよ。そんな言い方しなくても」


断ったのに、無理やりだったけど。心の中ではお兄ちゃんと同じように責めてしまう。本当に何でここまで来たの?


「このくらいの時間なら、葵1人でいつも帰ってくるだろ?」


私だって、1人で帰れるって言ったもの。なのに、強引に送ってきたのだ。

「渉さん」


「なんだよ」


「すいません。どうしても送りたくて、ここまで来てしまいました」


どうしても送りたくなった?どういう意味で?


「意味分かんないな。幸紀、彼女いるんだよな?送るなら、彼女を送れよ」


「いえ、彼女は送りたくならないので」


「はあ?」


お兄ちゃんの声が大きくなる。


「ちょっと、みんなこんな夜に外で立ち話なんてしてないで、家に入りなさいよ。藤沢くんもあがって」