歩いて10分は短い。我が家までって、こんなに近かった?

そろそろ手を離さなければならない。ずっと繋いでいたから、何となく名残惜しい。いつの間にか心臓の早さは通常に戻っていた。

慣れたのかな?


「ありがとうございました」


家の前で向き合って、お礼を言う。


「うん。おやすみ」


「おやすみなさい。気をつけて帰ってくださいね」


ゆっくりと手を離した。本当に名残惜しい。上がってもらったほうがよかったかな?


「ちょっと、待て」


「お兄ちゃん!」


お兄ちゃんはタイミング悪く現れることが多い気がする。


「何で今日も一緒にいるわけ?」


やっぱりまた機嫌が悪い。


「あのね、送ってきてもらっただけだよ」


「今まで何をしていたんだ?」


お兄ちゃんは親よりも過保護だけど、そんなに干渉することはなかった。無理に聞き出すことは、まずしない。

いつもと違うお兄ちゃんに私が動揺してしまう。


「私はね、友香とご飯を食べていたの。藤沢さんとは、帰るときに偶然会っただけだよ」