しかし、私の期待は砕ける。開いたのは反対側のドアだった。乗換駅だからか多くの人が降りていく。この体制が目立つのかチラチラと見ていく人が多い。

消えてしまいたいくらい恥ずかしい。


「あの、空いたので座りませんか?」


空席がいくつか出来て、立っていた他の乗客は座った。この車両で立っているのは私たちだけで、立っていると目立つから座りたい。


「ん、ああ、そうだな。座るか」


ドアにあった手がやっと動く。

が、動いた右手は私の左手を握り、空席まで誘導する。座れば離すのかと思ったけど、離さないで繋いだままだ。何で?

予想外のことに、心臓の動きが早くなってきた。このままでは、息苦しくもなりそうだから、離してもらおう。


「あの、手…離してもらえますか?」


「ん?別にこのままでいいじゃん。問題ないでしょ?」


「え…」


問題はある。心臓発作を起こしそうなくらい心臓がドクンドクンと波を打っているのだ。そうだ、私から離そう。

しかし、動かす手は反対に強く握られてしまう。