「あれ、山口さん、まだいたんですか?ん?萱森さん?」


「今、葵ちゃんと会ったとこだよ。幸紀はお嬢様と一緒に帰らなかったの?」


「俺は電車で帰りますよ。タクシーなら1人で帰れますからね。萱森さんは里中さんとご飯を食べに行ったんだっけ?」


「あ、はい」


何で知っているの?ああ、そうだった。友香が迎えに来たとき、藤沢さんに挨拶していたことを思い出した。

友香と出るときに、小島さんが藤沢さんを迎えに来ていたから、あの後すぐに帰ったのかもしれない。


「へー、ほんとに同じ会社なんだね。あ、葵ちゃん、電車が来るんじゃない?」


「はい、では、また」


私はホームへと急ぐ。


「待って。俺も行く」


「え?な、何でですか?


小走りする私の隣に藤沢さんが来た。


「送るよ」


「いえ、大丈夫ですよ」


まだ時間は8時過ぎたところで、送ってもらわないほどの遅い時間ではない。

それに藤沢さんの家は反対方向だ。