小島さんの疑い深さは半端ではない。追及が続いたら、余計なことを話して、逆にボロが出そうだ。つくづく怖い人だ。緊迫した空気がまだ残っている感じがする。


朝から、嫌な汗をかいてしまった。

「おはようございます!」


「おい、ギリギリだぞ」

田辺くんが息を切らせて、入ってきた。


「すいません!目覚ましが止まっていて、焦りましたよー」


「止めたのは田辺だろ?目覚ましをもう1つ増やしたらどうだよ?」


「あ、そうしようかな」


田辺くんの出社で空気が和らぐ。


「クスッ。田辺くん、おはよう」


「おはよう!葵、昨日はありがとうな。遅くまでかかった?」


「ううん、早めに終わったよ」


「田辺よりも榎本さんのほうがずっと役立つよ。お前、要らないわ」


藤沢さんの表情も和らぐ。小島さんに対して、平然としているように見えたが、それなりに緊張していたのかも。


「えー、ひどいなー。あれ?今日のネクタイ、いいですね!よく似合っていますよ」