翌日。


「離れて歩いてくださいよ。先に行ってもいいですから」


「何でだよ?同じところに行くんだから、一緒に行けばいいだろ?それにさっきまでと態度が違うんだけど?」


昨夜、お風呂に入らないで寝てしまった藤沢さんをお兄ちゃんが気遣って、早く起こした。私が起きた時、バスルームから濡れた髪のままで出てきたから、一瞬動きが止まってしまった。

藤沢さんが泊まったことを忘れてはいなかったけど、まだ寝ているかと思っていたから、すでに起きているなんて思いもしなかった。

寝癖のある髪と素っぴんを見られないよう、先に起きて、全て身支度を済ませる予定だったのに。

そんな私の心知らずの藤沢さんは「おはよう。昨日はありがとう.なんて、爽やかな笑顔を見せたから、朝からときめいてしまった。

スーツは昨日と同じだが、ワイシャツとネクタイはお兄ちゃんのを借りていた。全部同じだと誰に怪しまれるか分からない。特に小島さんには注意が必要だ。