「幸紀、帰れよ」


「お兄ちゃん!出たの?」


まだ髪が濡れているお兄ちゃんが床にある掛け布団を持つ。藤沢さんは正座をして、うなだれた。


「渉さん…、すみません。泊めてもらえるなら泊めてください」


「は?図々しいな」


「頭が痛くて…このまま寝たいんです」


「え?大丈夫ですか?」


頭を抱える藤沢さんに私は近付いた。


「あれだけ飲んだんだから、痛くなるのも当然だ。葵、心配する必要はないよ。幸紀、上まで歩けよ」


お兄ちゃんは右手で藤沢さんを支えて、左手で布団を持った。藤沢さんの姿は情けないけど、お兄ちゃんはかっこいい。それに、厳しいことを言ってはいるけど、やっぱり優しい。

うん、自慢のお兄ちゃんだ。


「葵ちゃん…」


「勝手に葵を呼ぶな。呼ぶときは俺の許可を得てからにしろよ」


たまに理不尽なことを言うが…。