「ただいまー」


お兄ちゃんたちのために、先にドアを開けた。藤沢さんの目は開いてない。玄関に座らせたから、靴を脱がせる。

「幸紀、起きろ!2階まで歩けよ」


「トイレ…」


「はあ?トイレ?」


「漏れます」


「漏らすな!」


お兄ちゃんが慌てて、藤沢さんを引きずってトイレに連れていく。


「はあ、ひと苦労だよ。面倒なヤツだよな」


「藤沢さんは?」


トイレから戻ってきたのはお兄ちゃんだけだった。お兄ちゃんはコップに水を注いで、一気に飲んだ。


「置いてきた。あははー、トイレで寝てるよ」


「えー、だめでしょう?藤沢さーん、大丈夫ですか?」


「葵、待て」


トイレへ向かう私をお兄ちゃんが引き止める。


「なに?」


「俺が行く」


「ええ?私も行くよ」


お兄ちゃんだけに任せると何をするか分からない。大股で歩くお兄ちゃんの後を追いかけた。