「お兄ちゃん、なにかあったの?もう結構飲んだの?酔っている?」


「別に何もない。酔ってもないよ。幸紀、ビールじゃなくて、焼酎を飲めよ」


「いや、俺ビールが好きなんです」


「いいから」


藤沢さんに絡むお兄ちゃんはただの酔っ払いにしか見えない。


しかし…


「こいつ、変わらないな。酒弱いくせに意地っ張りだから」


「お兄ちゃんが飲ませ過ぎるからいけないのよ」


お兄ちゃんよりも酔っ払ったのは藤沢さんだった。早々と酔い潰れてしまった。


焼き鳥屋から我が家まで歩いて、10分くらいだけど、酔っ払いの藤沢さんを運ぶのは困難だった。もちろん1人で帰るのも困難だから、我が家に泊めることにした。


「幸紀、しっかり歩けよ。うちに泊めてやるんだからな」


「えー、歩いてるってばー」


「藤沢さん、大丈夫ですか?」


お兄ちゃんが藤沢さんの肩を抱いて歩く。反対の肩を私が抱こうとしたら、「葵は、触るな」と言われた。二人で運んだほうが絶対に楽だし、早く運べるのに。