たまに家族で行く焼き鳥屋さんで駅からも近い。お兄ちゃんの好きな芋焼酎がいろいろ揃っている。だから、お兄ちゃんは週に1度必ず行っている。


「うん、いいね。そこに行こう。案内して」


「いえ、あの、そういう意味で言ったのじゃなくて」


焼き鳥と聞いて、思わずおすすめのお店を話してしまったけど、一緒に行くのを前提で言ったのではない。だけど、藤沢さんは行く気満々になってしまった。


「いらっしゃいませ!あれ、葵ちゃん!渉くんも来てるよ」


「うそ?お兄ちゃんも?え…どこに?」


店内は広くない。カウンター席と4人用のテーブルが3つあるだけで、お兄ちゃん1人の時はカウンターに座っている。

でも、そこに姿はない。


ガチャ

奥にあるトイレのドアが開く。そこから出てきたのはお兄ちゃんだった。


「葵?…なんで幸紀も?」


「渉さん、どうも」


「何がどうもだよ。何で葵と来てるの?」


お兄ちゃんは眉間に皺を寄せる。滅多に見ない機嫌の良くない顔だ。今日のお兄ちゃんは危険かな?