もとはと言えばふたりの同棲だって、ちゃんとしたものじゃなかった。



高校出てバイトしながら一人暮らしをしていた実織と出会ったのは、友達の紹介で。

正史はその頃大学を出てすぐで、まともな会社に就職できたのはよかったものの――大学時代に一年半付き合っていた彼女にふられたばかりだった。


『誰か女の子紹介してよ。素直で、可愛い子』


一人の友人を通じて結びつけられたふたり。

はじめは友達だった。


一年半、深い付き合いをしてきたはずの彼女にあっさりふられて――ぼろぼろになっていた正史の心を、いつの間にか実織の笑顔が癒すようになっていた。

正直言うと……お互いがお互い、さほどタイプなわけでもない。

だが不思議と波長が合うふたり――恋人同士になるには、時間はいらなかった。


もらった合いカギ……

ほんとは実織のアパート、家賃払ってるのはご両親なんだけど。



ご両親には何度かご挨拶したし、ちょっと気に入られてるかな、なんて思ってたけど――内緒で一緒に暮らしてた、罰……なのかもしれない。