ブランデーのように深い色に、
長く伸びたアンテナ、艶のあるボディ。


もうちょっとで……外見だけでも森の王者のそっくりさんになれたのに。










「ちょっとちょっと!そこっ……ゴキブリ!!」


「――うわっ!おれゴキブリダメなんだってば!」


「男でしょ!どうにかしてよっ」


「おまえそれ卑怯だぞ!」


ピーピー言いながらも、正史は殺虫剤片手に闘ってくれた。

スプレーで、どうにか動きを止め――しかしなおも手足をばたつかせている黒い妖精に、これでもかといわんばかりに熱湯を浴びせた。


「――ふう……勝った……」


額の汗を拭いながら、正史は満足げに勝ち誇った笑みを浮かべた。


「ありがとう……まーくんがいてくれてほんとによかった」


「おまえな……そんなときしかおれを必要としてないだろ」