「里香の彼氏って優しそうだよね〜、うちとは大違い。里香が心配することなんてなんにもなさそう」


相変わらず雑誌の“あなたの恋の長続き度チェック”をしながら、彼女がのんびりとつぶやいた。

もはや誰も見ていないテレビからは、夜中に延々と流れているテレビショッピングが、今日何度目かの“驚きのお値段発表はCMのあとスグ!”を大声で喋り続けている。


「浩貴さん……だっけ?里香の彼氏」


耳に残る声が、頭の中で――まるで狭いトンネルの中にいるかのように、何度も何度も響いている。





“……由利…………”





はじめて家にお邪魔したあの日、あたしは彼に抱かれた。


冷たくなった指先は、あたたかな彼の手に握りしめてもらっても最後まで暖かくなることはなく、

あたしの身体に残ったのは、芯にうずく痛みとからっぽになった心だけ。



疲れて眠ってしまった彼の隣で、あたしは死んでしまいたかった。



『……由利…………』



寝言で好きな女の子の名を呼ばないで。

せめて、今だけでいいから――あたしを、里香って……呼んで。