ふたりの歯車がズレ始めたのは、正史が仕事を辞めてから。

正史が今まで少しながら渡していた生活費が、もちろんゼロになり――家計はすべて実織がまかなった。


『まーくんが楽しめる仕事が見つかるまで……あたし頑張るよ』


そう言って笑顔を見せた実織は、もういない。

自分のふがいなさにため息をついて――でも、正史にはどうすることもできなかった。


「みおはもう……おれのこと……嫌いになった?」


小さくつぶやいた言葉に――もちろん返事はなかった。








しかし!
正史さんは正史さんなりに頑張ってきたんです!

仕事を探し、面接を受けつつ――家に帰れば炊事・洗濯・掃除。


一方の実織はというと、


『バイト前は疲れたくないから寝とく〜』


バイトのシフトが早番だろうが遅番だろうが、全くベッドから起き上がらない!

昔はかいがいしく晩御飯作って正史の帰りを待っていたのに……。


「最近はおればっか飯作ってたし……。あのクソアマ」





もはや――どちらが悪いというわけではない、完全な意地の張り合いだった。