この世界の全て
おもちゃだったら素敵だと思ったの。
『気づいてよ、苦しいよ』
そこまで君にメールを打った。
送信ボタンを押す所で躊躇い、指を彷徨わせた。
そして、
消去ボタンを、押した。
この世界がおもちゃだったら、
君の悪口をいうあいつも、
君への思いを邪魔するあの子も、
楽しいものへと変わる気がした。
皆、兵隊さんの様に歩いて、
その動きは規則的で、なんだか不思議な雰囲気を醸し出して、
誰も私達の邪魔なんてしない。
そんな狭い世界なら、私の声は君に届くと思った。
「…そんな、幸せ」
あったらいいって、思っていたの。
けれど、私
そんな世界があったとしても、独りになってしまう様な気がした。
君はきっと、私のことを気にかけてはいない。
…そんなこと、前から知っていたのに
胸が、痛い。
それでも。
『待ってるからね』
そんな文面のメールもまた、君に送る前に、消去ボタンで消した。