「さーーーーえっ、どした?」


気がつくと、杏ちゃんがあたしを覗きこんでいる。


ああもう、なんてキレイな顔。


「何でもないよー。ごめん、何か話してた?」


「滅茶苦茶話してたし!また1からとか無理」


「ごめんごめん」


ぷう、と頬を膨らますこんなかわいい高2男子、他にいるだろうか。


「あーあ、でも、いいなぁ桜笑は」


「なんでよぉ?」


「その妙に達観した感じ、落ち着くー。お嫁にしてよ」


「ちがくない?なんかそれ違くなーいー??」


げらげら笑うあたしたち。


そうか。杏ちゃんを嫁にもらうという手があったのか。


……いや、違う違う。


だけど。


どんな形であれ、あたしは杏ちゃんが好き。


この先、どんなことがあるか分からないけど、あたしは何だか心が少し軽くなった。


「杏ちゃん、大好き」



【完】