「最初の笛そこの暇そうな矢田ちゃん頼むなー」

「おいおい年寄りを使うな!」

「年寄りっつっても21だろ?俺らとそんな変わんねーじゃん」

「ちっ、やかましいガキだな」

「きょーしがそんなこと言っていーんですかー?りじちょーに言いつけるぞー」

「うっせ、さっさと準備しろ」

「へいへい」





どうしましょう…私なんかで大丈夫でしょうか…サッカーのルールはある程度理解しているつもりですがいざやるとなると…


焦っている私に声を掛けたのは隼人くん

「だーいじょーぶだよ、僕か東雲にパスくれれば」

「はい…」

そう言って頭を撫でてくれました

いい人です


さぁ、キックオフです

最初にボールを蹴るのは私、なぜかジャンケンで勝ってしまいました…

「桜咲ー落ち着いてボールを前に蹴れ!シュートできたらシュート」

「はい!」

前半が始まって2秒、すぐに敵がボールを奪いに来ました


「えっ、えと、えい!」

私が今持てる力を込めて前へ放ったシュートは最初のゲームで油断して前に出ていたゴールキーパーさんの後ろをすり抜けてゴールしました


「「「えええええええ⁉︎」」」

えええええ⁉︎

「えええええええ⁉︎」

「ってお前が驚いてどうする」

「いえ、だって…ええ⁉︎奇跡ですね!」

「本当奇跡なんてもんじゃねぇ、神秘だ!」

おっしゃっている意味がわかりかねませんが

なんとなく察します

「お前、実はすげーやつなんじゃ?」

「まぐれですよ…私がこんなのできるわけないじゃないですか」

私がそう言うと、東雲は納得したように頷きうんうんと一人言っている

「…サッカーって楽しいですね」

「あ?んなのあったりまえだろ?」

東雲はニカッて笑って守備位置についた

よし…ご迷惑をおかけしないように全力を尽くします

私にボールのパスは来ない…それなら

私は敵に回ったパスを素早くカットして東雲にパスしました、やはり身長が低いと何かと便利ですね

東雲は驚いた様子でしたがちゃんと受けてくださいました

「パスです!東雲」

「あっ?おう…」

そして見事なシュート

「やったぁ!」

東雲とハイタッチをしました

あっ…敬語を忘れハイタッチまでしてしまいました

「あっ…ごめんなさい…」

謝った

「謝らねぇでいいんだよ!それほど楽しかったんだろ?」

「…はい!」

東雲と話していたらさっきのゲームでボールをカットした先輩がこっちに来た

「おい!桜咲!」

おっ、怒られる…

私はギュッと目を閉じた

「お前サッカー本当に初心者?つかぜひ我がサッカー部へ!」

………え?

「…てっきり怒っているのかと思いました」

「なんで俺が怒るんだ?」

「先輩のボールをカットしてしまったからです」

うつむきながらおずおず答えると

「なんだ、そんな事か、俺が後輩にカットされたくらいで怒るわけないだろ?それより、本当に初心者⁉︎」

「はい…一応ルールは知っているんですが、プレイしたのは初めてです」

「へー面白いな入部すれば?」

「とりあえず、お婆様に相談します」

「お婆様?」

「はい…相談しないで入ると今後の予定が無理でしょうし」

「そっか、じゃあ頼むなー」

先輩が去ろうとしたので呼び止めて

「あっあの…学年、組、名前を教えていただけませんか?」

「えっ?」

「先輩部長ですよね?皆さんがよくボールをパスしていましたので…入部届けを提出するのは先輩ですよね?あ、間違っていたらごめんなさい」

「あってる、あってる3年 3組 東城 優弥よろしくな」

そう言ってニコッと笑い去って行った


3年3組東城優弥

「覚えました」

手元の腕時計を見ると6時ちょうどです、そろそろお迎えの車用意してもらいましょう

「あの!東雲、私はそろそろ帰らせていただきます」

「もう帰るのか?」

「習い事があるので」

「そーかじゃーなー」

「ごきげんよう」


そう言い帰ろうとした矢先

「桜咲ー俺のユニフォーム…」

「あっ、すみませんすぐ脱ぎます!」

私が脱ごうとする仕草をすると

「部室つかえー!アホか!」

「あっそうでした!」

走って部室を借りようとすると

「あっ…待て!まだ先輩らが着替えて…ガチャ」

「きゃああああ!すみません、すみません!ちょっと部室を借ります」

最悪だー!申し訳ない

先輩方が着替えてる中一緒に着替え、ユニフォームを脱ぎました

「失礼しました!」

走って東雲のところに行って

「あの、お洗濯してから返します、汗ダラダラなので」

「お前汗かいてねーじゃん…」

「ですが…汚いので」

「ん、分かったじゃ、頼むー」

「はい、今度こそごきげんよう」

車を用意して、無事ピアノへ行けました