ムニュ
両頬をいきなり、つままれる。
「にゃんひょきょと、ひゅりゅんでひゅか。」
(何てこと、するんですか)
仁さんに両頬を掴まれたせいで、上手く言葉を喋れない。
おまけにそんな私を見て、笑ってくるので恥ずかしい。
面白いものを見るように、笑わないでもらいたいよ……。
「安心しろ、もう怖がらなくていい。」
「俺が、お前を守ってやるよ。」
仁さんは、私の頬をつまむのをやめて、再び歩き出した。
その背中には、金色の刺繍が施されていた。
《王龍 19代目総長 龍王》
龍王……?
確か、教室で聞いたことがある。
龍王が強いとか、カッコイイとか。
教室の端にいても、聞こえるくらいの噂が立っていた。