「いっつ・・・・。」
思わず顔を歪めた。
「どうした?」
「なんでもないっ・・・あっ。」
私は仁の胸板から顔を離すと、あることに気づいた。
仁のシャツが私の涙で、濡れている。
それに強く抱きしめたせいで、くしゃくしゃと皺になっている。
「ごめんなさい・・・。」
仁、きっと怒るだろうな。
私は肩をすぼめて、仁をしたからチラリとみた。
「上目使いとか反則だな。」
仁は何かを呟くと、許してくれた。
「やっと、俺のものになってくれた。」
仁は壊れ物を扱うように、優しく私の頭を撫でた。
幸せそうな笑顔になる仁を見て、私の心に幸せがジワリと滲む。
きっと、これ以上の幸せがない。って言えるくらいに幸せだよ。
私には、もったいないくらいに。