あたしに差し出す。
「これ。さっき、2人が置いて行っただ。「見に来い」って。でも、わたしは2人の音楽を何も知らないから、百瀬にやるよ
そして手渡された、ライブのチケット。
「今日の夜が、ラストライブなんだと。時間の都合が合ったら、見に行ってやれ。それじゃ、わたしは仕事に戻らないと」
その言葉を残し、教師はどこかへ行ってしまった。
あたしの手元に残った、ライブのチケット。
そのチケットを、あたしは大事そうに、、、鞄の奥へとしまった。
そして、あたしはゆっくりと瞳閉じる。
もう、悠夢の顔も、、、はっきりと、覚えていない。
だけど、、、
悠夢のことを想っていた。
ほんのり。と、ピンク色した、、、幼い、恋の色。
あれは、、、「恋」と、呼んで言いのだろうか?
もし、誰もが1つや2つ経験する。
「恋」と、言うものだとするなら、、、
10代の頃のあたしは、周りの子たちより、、、幼すぎた。
だから恋にすら、気づけなかった。
そして今も、それにまだ気づけていない。
だけど、、、
もう1度、悠夢に会いたい。と、は思う。
話したいことがあるわけでも、ない。
ただ、、、悠夢に会いたいんだ。
それは、あたし自身の気持ちを、、、確かめたいからなのかもしれない。
会った所で、、、
今の悠夢に、大切な人が傍に居るかもしれない。
そう思うと、胸がチクリッ。と、切ない痛みが襲う。
これが、、、恋の痛み?
切ない痛みに、、、
あたしは「恋」と言う、幻にしよう。と、しているのかな?
全ては、悠夢に、、、もう1度、会えたらわかる気がする。
その時。
この、切ない痛みが、どんな痛みに変わるだろう。
そして、あたしは、、、
何を想い、何を、、、求めるのだろう。
あたしは、悠夢のことを、、、求めるだろうか?
それは、、、今になっても、わからない。
だけど、、、
どうしても、会いたい。
悠夢に、会いたいんだ。
そして、あたしは本当の自分の気持ちに、、、気づく。
人気がなくなり、校舎の外にも疎らにしか人が居なくなったのを確認し、、、
1人静かに、体育館を後にする。
玄関まで来て、最後に悠夢と会った日のことを思い出す。
『また、、、百瀬さんと会いたいから』
最後の最後に悠夢が言った、その言葉。
悠夢は、覚えていますか?
そして、あたしが言った、、、
『その時までに、この気持ちが、、、「恋」だったか、考えておく』
その約束を、覚えていますか?
全ては、もう1度、、、
あたし達が、会えたらわかる。
もし、悠夢が覚えていなかった。と、しても、、、
それでも、良い。
悠夢が教えてくれた、気持ちも想いも、、、
全て、、、
歌へと、変えてしまおう。
きっと、あの頃のあたしには書けなかった、、、
「LOVE」とも言えない、ラブソングが書ける気がする。
それは、マイナスじゃなく、、、
あたしにとっても、Libreにとっても、、、
新しい、音楽になる。
だから、、、悠夢と出会った事は、プラスになる。
そしてあたしは、兄が生活をしている家に向って歩いた。
家に、兄の姿はなくて、、、
あたしが部屋を出た時のままだ。
兄はまだ、ここに帰って来ていないのだろう。
この街を、離れる前に、、、
直接、兄に「おめでとう」と、声を掛けたいな。
明日の昼には、あたしはまた自分の居るべき場所へと戻る。
戻らなきゃ、いけない。
そして最後のOFFは、1人で静かに音楽と対話したい。
新しい、音たちと出会うために、、、
その音たちを繋げて、歌にして、Libreの音楽にする。
Libreの音楽を、求めてくれる人が居るから、、、
明日、、、
あたしがこの街を離れるまでに、兄も帰って来るよね?
ソファに体を預け、少しだけ、、、
そう思い、あたしは重たくなって来た、瞼を閉じた。
何時、だろう?
目を覚ました時には、外は日が落ちていた。
結局、いつものOFFと変わらない気がする。
寝て過ごしてばっか、だな。
乱れた髪を手で整えながら、体を起こす。
鞄の中に入れていた携帯が、震えた。
なので鞄の中から、音の主を探す。
「もしもし」
そして、あたしは電話に耳を傾けた。
『寝てたの?』
電話の相手は、瑠奈だった。
「うん。そうみたい」
『ラナチ。復活するんだって?』
どこから、聞いたのか?
瑠奈はそんなことを、尋ねて来た。
「決まったの?」
『さっき、あたしも伊吹から聞いた。なんか、伊吹が偶然事務所に行ったら、事務所の人間が大はしゃぎで話してたらしいよ』
そりゃ、事務所の人間たちもハシャグだろう。
事務所の看板とも呼べる、Lanatureが戻ってくるのだから、、、
『負けてられないね』
「うん。負けたくない」
同じバンドのLanatureに、簡単に負けを認めたくなんか、ない。
同じバンドだからこそ、同じ所に居たい。
『でも、良かったね?チャキ。DAIさんがまた、ステージに立てて』
「お兄ちゃん、頑張ってから、、、本当に、良かった」
『全部、スタートに戻ったね?』
スタート、、、
それは、少し違うかな?
今、LibreはLanatureと同じ世界に居るから、、、
だけど、、、
瑠奈の言うように、LibreとLanatureは今、、、
同じスタートラインに、やっと、、、立てたのかもしれない。
「瑠奈。そういえば、Jeunesseもデビューが決まったみたいだよ」
学校で、担任の教師に聞いたことを、あたしは瑠奈に話す。
『Jeunesseも、か。奏の奴、うるさくなるかもね』
湊と奏は、犬猿の仲だったんだっけ?
でも、、、
『奏がうるさいのは、いつものことだよ』
「それも、そっか」
瑠奈は電話越しに、笑みを溢した。
『みんな前に進んでる。だから、ここでLibreも歩みを止めるわけに行かない』
「止めないよ。あたし達は、、、もっと、もっと上に行く」
昔、兄が口にした言葉を、、、
あたしは自分の言葉のように、瑠奈に伝えた。
『うん。今回のOFFでゆっくり体休めて、また当分は働きますか!!』
その瑠奈の言葉に、あたしは笑みを溢した。