「澤田さん、車よろしく」

澤田さんは、うちの一番の執事さん。

家族からの信頼も厚くて、すっごく頼りになる。

「かしこまりました」

さて、準備もできたことだし学校に行こうかな。

玄関に回ると執事が出てきてドアを開けてくれた。

「ありがとう」

えーっと、今日は確か、新学期初日。

クラス替えがあるから嫌だな。

「そろそろ到着いたします」

あぁ、もうそんなに。

鞄を持って、準備。

見えてきた巨大な洋館が、私立彩香学園。

ロータリーには車が二、三台停まっていたが、あたしたちの黒塗りのベンツが来た途端に去っていった。

そんなに怖がらなくてもいいのにね。

「どうぞ、いってらっしゃいませ」

「いってきます」

「おかえりの際はどうかご連絡を」

「わかってるって」

もう、心配しすぎなんだから。

車を降りて、校舎へ歩き出す。

ん?

あのシルエットは…。

ビアンカだ!

葉山ビアンカは、ヨーロッパの貴族の末裔。

おばあちゃんがフランス人らしくて、クォーターだから瞳が澄んだ青なの。

あたしはその瞳が大好きなんだ。

「おはよう、ビアンカ」

「あ、おはよっ」

4月から高校二年生に進級したあたしたちは、制服が少し変わった。

前は、淡いグレーのリボンだったけど、今は赤いチェック。

こっちの方が可愛いから早く進級したい、って思ってたんだ。

「今日は講堂に集まるんだったよね?」

「あぁ、なんかそんなこと言ってたね」

「もうクラスの紙貼り出されてるんじゃない?」

「ほんとに?じゃ、早く行こ!」

あたしたちは、早歩きで講堂へ向かった。