それは幼馴染みの糸井響だ。

あ、と口から声が漏れながら受け取り「どうだった?」と聞いてみる。


響は無表情のまま「面白かった。ありがとう」とありがとうの部分だけ微笑みながら答えた。

その微笑みにきゅんとしたことは私だけの秘密だ。

私も少し赤くなった頬を気にしながら、よかったっと笑いながら答える。

響がまた何かを差し出してきた。
なんだろうと思いながら、それを受けとると
「それ、聞きたがってただろ。俺も興味があって買ったから貸す。」
と心なしか頬を染めながら響が言った。

ありがとう、と伝えると響はコクンと頷き自分の席に戻る。

ふと、後ろの子と話していたみずきのほうを見るとにやにやしながらこっちを見ていた。