「あいつの頭に墨汁ぶっかけてやろうかしら」


恐ろしいことを言う野々花に、あたしは「まあまあ」となだめる。

野々花なら最悪そんなこともやりかね無い。


「そういえば、なに食べに行くか決まったっけ?」

「いや、決まってねえな」


峰が言うと、野々花は「なにそれ……」と更に肩を落とす。


「まあ、何食うにしろケイの奢りだからな」


峰は意地悪く笑って、席を立った。


「あいつの奢りなの? じゃあ行こう〜」


……ケイちゃん、奢るなんて一言も言ってなかった気がするけど……。 


「早く行くぞー!」


廊下のどこからかケイちゃんがそう叫んだのが聞こえて、わたしたちは教室を後にした。