彼女は神崎野々花(かんざきののか)
野々花とも、高校で知り合って仲良くなったけれどたった2年だけの仲じゃないみたいに何でも話し合える。

野々花は学校の中でも、一番大人っぽい雰囲気で顔立ちだって綺麗。

今日も、ストレートの長い黒髪がさらりと揺れる。


「それよりも水谷、あんた早くその髪色戻してきなさいよ」

「え~、これお気に入りなのにぃ?」

「あんたのその髪のせいで、風紀委員のあたしが毎回注意されるんだから!」


野々香は眉間にシワを寄せて怒る。

しかし、ケイちゃんはそんなことは気にせずに自分の髪の毛先を摘まんだ。


「でも、俺この髪色気に入ってるんだよね」


そう言いながら、ケイちゃんは綺麗なイエローアッシュの髪をふわふわと揺らす。

今はもう見慣れたけれど、初めてケイちゃんを見たときはこの髪色に衝撃を受けた。
この容姿で派手髪だったから、入学式の時周りがざわついていたのを今でも覚えている。


「お前、もう黒髪に戻さねーの?」


峰が聞くと、ケイちゃんは「う〜ん」と首を捻った。


「まぁ、気分次第って感じかな」

「はぁ!?明日黒に戻してきなさいよ!明日!」

「え~、今回は許してよ野々香ちゃん」

「あんた何回それ言うのよ!」


野々香は眉間にシワを寄せたまま、ケイちゃんに怒鳴る。

この2人のやり取りも、野々花が1年生のときに風紀委員になって以来ずっと続いている。

野々花は本当にうんざりしているみたいだけど、こんな風にケイちゃんに怒れるのは進路指導の先生と野々花くらい。

それに、こんな風に騒がしい光景がなんだかあたしは好きだったりする。

……野々花と毎回怒られているケイちゃんには、申し訳なくて言えないけれど。