唐突な言葉にあたしは思わず聞き返す。


「そう言ったら、何か変わんの」


峰の少し伏し目がちな視線から、真っすぐ見据えられて視線が交わる。

その表情はあまりにも冷静で、うまく感情が読み取れない。

まるでいつもの峰じゃない、知らない人みたい。


「……それは……」


あたしは戸惑いを隠せないまま、なにか言葉を発さないとと思い動かない頭を巡らせていると、峰の真っ赤な耳に目が留まった。


「峰……耳、真っ赤だよ」

「はっ?」

「もう〜、なんだあ」


あたしは峰の反応とほぼ同時に全身の力が抜けて、持っていた鞄を地面に置いた。


「冗談やめてよ〜、びっくりしたじゃん」


安堵の気持ちいっぱいで言ったけれど、峰から返事がなく、微かに息をつく気配を感じてあたしは顔を上げた。

すると、峰はさっきのように顔を少し俯かせていて、なんだか不安になったあたしは「峰……?」と名前を呼んだ。