「貸してくれるの?」

「いや、あげるよ」

「ええ?!」


思わず大きな声が出て、あたしは咄嗟に口元を手で押さえる。


「そんな、貴重なものだし貰えないよ」

「それが兄ちゃんも全く同じの持ってたんだよ。 同時期にこのバンドはまったてたらしくてさ」

「なにそれ……奇跡の兄弟じゃんか……」


そう言うと、峰は「なんだそれ」と軽く笑った。


「それ俺のだし、もうデータも落としてあるから」

「ほ、ほんとに? いいの?」

「いいよ」


あたしは「ありがとう、ありがとう」と峰を拝みながら、傷が付かないように鞄の中にスペースを作ってCDを仕舞い込んだ。