徹は書斎のデスクの前で


何故 今頃 桜子があのような言葉を発したのか

疑問に思っていた。


(今頃___何故?)


(過去を思い出したのか・・・

まさか・・・有り得ない)


徹は自問自答をしていた。


一方 桜子は少しずつだが


過去の場面が所々 頭に


甦ってきていた。


それは桜子にとって


辛く 苦しく 怖い出来事ばかりであった。


溢れる涙を拭い 桜子は


足立の事を思った。


(足立さん・・・助けて・・・)


拭っても 拭っても


溢れ出す涙・・・


そして その夜 徹と桜子は


別々の部屋で


一夜を過ごした。


そして翌朝 桜子は憔悴した様子だったが


いつもと同じように接した。


徹も昨夜の事は一言も触れずにいた。


敢えて 昨夜の事を忘れさすようとしているのか携帯の事を話題にしてきた。


「桜子・・・携帯の色とかデザイン 何か希望はあるのか・・・」


「いえ・・・別に・・・」


「そうか・・・じゃ・・・
桜子に似合いそうな物を

今晩 買ってくるから

楽しみにしておきなさい」


「別に今晩じゃなくても・・・お忙しいのに・・・」

「忙しくても 桜子の為なら・・・僕は構わないよ」


徹の優しさが逆に桜子は


不信感を募らせていた。