「拓馬・・・?私の夫は

緑川 徹・・・ えっ・・・

どうなってるの?」


「お父さんは・・・?」


「お父さん・・・?そんな人は私の周りにはいないし・・・
私が覚えてるのは
夫と早紀とお義母さまと・・・
そう・・・白い壁・・・

白衣の徹さん・・・

わからない・・・
思い出せない・・・」


母親は優しく肩を抱きしめた。


「落ち着いて・・・辛いね・・・

大丈夫・・・母さん 絶対

アナタの記憶 戻してあげるから・・・

連絡先 教えてちょうだい

母さんの名前は貝原 富美子

今は大阪に住んでるから

出版会社に勤めてるのよ

当分 担当がこっち方面だから・・・

これ・・・母さんの携帯の番号・・・


母さん 調べるから・・・

取りあえず 家族の人達には内緒に・・・よ

絶対 桜子の記憶 戻すからね・・・」


桜子は何故か この女性の前では 心がホッと落ち着ける感じでいた。

「じゃ・・・母さん 仕事があるから・・・

また 連絡するから・・・

早紀ちゃん・・・」


富美子は大声で早紀を呼んだ。


「オバチャン 帰るけど

ママの事 お願いね・・・

あっ・・・これ 早紀ちゃんにあげる・・・」


富美子は筒のような物を早紀に渡した。