ここは神戸の閑静な住宅地


午後の昼下がり


中庭の草花の手入れに


ホッと一息 ため息をつく女性


緑川桜子 23歳


「ママ ただいま」


「おかえりなさい・・・あらっ・・・もう そんな時間・・・」


優しく微笑む桜子の前に


体より大きいランドセルを背負う少女


桜子の子供 緑川早紀


今年から小学1年生


「御祖母様は・・・?」


「今日はお友達と旅行に出かけてるわよ・・・」


「ヤッター」


早紀は嬉しそうに跳び上がって喜んだ。


「早紀ちゃん・・・そんな言い方 ダメでしょ」


桜子は少し怒った口調で注意した。


早紀はペロッと舌を出し


「ランドセル 置いてきます」


桜子はニッコリ微笑み頷いた。


早紀の喜ぶ意味は桜子も理解していた。


夫の母親 晴子は桜子や早紀に対して 厳しく


ホッと一息できる間がないほど


常日頃 神経をピリピリしている生活であった。