何とも言えず、顔を見合わせる私とお兄ちゃん。

それを見て叔父様はまた小さく笑う。



「簡単な事だよ。去年は吉良は初伊と志乃と日程ずらして来たし、志乃に聞いたら“今日はきっと来ませんわ”って笑顔だったけど不機嫌だったし。それを見たら、答えは必然的に見えてくるだろう?」


「……父さんは鋭いですね。」


「一応三万人を養う烏丸の社長だからね。鋭くなきゃやっていけない。」




優しくて、大人で、大好きな真尋叔父様だけど。

経済界では、“烏、カカシを喰い殺す”と揶揄される程の手腕の持ち主だ。

そんな人に隠し事なんて何も出来ないんじゃないか、そう思って。

でも、きっと。

それが出来るようになれば、ようやく一人前になれるんじゃないか。

何となくそう思った。




「ところで、今回はどれくらいいるの?」

「私は明日帰ります。」

「俺は3日程。」

「少ないよ。寂しいなぁ。」




残念がる叔父様の姿に、少しだけ早く帰ることの罪悪感を感じたけれど、私は此処にいたくないんだ。


叔父様は大好きだけど、此処にいればいるほど、“真実”を痛いほど感じてしまうから。


2時間のディナーを終え、私とお兄ちゃんは家に帰った。

叔父様は一旦本社に戻ると言って、私達とは違う車に乗り込んだ。


帰宅してからはお兄ちゃんの部屋に入り浸っていたけれど、時計を見れば時刻はもうすぐ12時。

眠そうなお兄ちゃんを話に付き合わせるのは可哀想で、戻るねと一声掛けて私は部屋に帰ることにした。

それは、すぐに後悔する事となる。