「綺麗だな。」

「きゃー、殺し文句ー……。」



白いタキシードを身に纏い、ふわりと笑う烏丸吉良君。

兄といえど人間の性質的に赤くなるのは回避できないよね。



叔父様、お兄ちゃんとやってたのは、展望台にあるいかにも高級そうなレストランだった。

しかも貸切らしくて、叔父様凄いと感服するばかりである。




「それで?初伊はお嬢様に上手く紛れ込めてるの?」

「紛れ込まれてるって……叔父様、私の事何だと思ってるんですか!」

「お嬢様の皮を被ったお転婆娘、でしょ。」

「もー!!」



いたずらっぽく笑う叔父様に、冗談でむくれる私。

これでも一応天下のカナ女生ですよ!と言えば。



「だってねぇ、“完璧なお嬢様になってきます!”なんて意気込んだくせに西巴君と橘君に即バレしただろう?」

「父さん。初伊はお嬢様やってますよ……一応。」

「ふふ、その一応が気になるねぇ。」

「お兄ちゃん。私、カナンでは確実にお嬢さまやってるんだから。」



そりゃあ、お兄ちゃんが見ている南では素だけれども、しっかり向こうでは烏丸の御令嬢、やってるもんね!

叔父様の手前、それは言わなかったけれどお兄ちゃんは勝手に南での私を回想したらしい。




「……ふ。お嬢さま……か。」



鼻で笑われた。



確かにお兄ちゃんからしてみたら、「何がお嬢さまだよ」とツッコみたいレベルかもしれないけど!

でもね、カナンではちゃんとやってるんだから、お嬢さまを全否定されるのは悔しいよね!

「今馬鹿にしたでしょ」とジトーっと目を細めてお兄ちゃんを見れば、「事実だろう」と返ってきた。



軽く怒る私と、それを軽くかわすお兄ちゃん。

その様子を見て叔父様はクスリと笑った。




「二人は、仲直りしたんだね。」




何でもないような口調で叔父様は言う。

私もお兄ちゃんも、それには少しだけ驚いた。



家出期間中、叔父様にはその事が一切バレないようにしていた。

だってバレたら、心配させちゃうから。

それがお兄ちゃんとお姉ちゃん、そして私の無言の了解だったんだけど、ガッツリバレている。