叔母様は長い髪を下の方できっちりお団子に、濃紺のワンピースを纏っていた。

目もとはキリッとした紛れもない美人さんだが……冷たい印象を持ってしまう。


会ってしまったからには挨拶をしなくては。

「お久しぶりです」と頭を下げた。



「一年ぶりね。お元気?」

「お陰様で元気にやっております。叔母様は、お変わりありませんか?」



私は頭を下げたまま話す。

以前、「誰が頭を上げていいと言ったの!!」と叩かれた事があったから。

お互い本当に口先だけの挨拶だ。



「貴方に今会うまでは楽しくやっていたのだけれど。」

「……すみません。」



いや、叔母様は本心かもしれないね。

まるで汚物を見るような視線って言うのだろう。

決して親戚に向ける視線とはまるきり違うものが私に向けられた。


暫くノーコメントだったが、「あら……その格好……」と声がしてびくりとする。

叔母様は、私が華美にすることを嫌うから。

この高そうなドレスを破かれたらどうしよう!と内心気が気じゃなかったのだけれども……。



「貴方が真尋さんと何をしようと構わないけど、真央には近づかないようにね。」

「……分かりました。」



意外なことに、あまり何も言われなかったのだ。



「ますますあの女に似てきて、見苦しいこと。」


そう言って叔母様は階段を降りていった。



「お嬢さま!大丈夫ですか?」

「奥様も何であんなきつい事……」


女主人の姿が見えなくなるやいなや、駆け寄り励ましてくれるメイドさん達。

でも、今日は意外と本当にましな扱いを受けた気がする。



「今日は、なんか優しかった方ですし、気にしないで下さい。心配してくださってありがとうございます。」



笑ってお礼を言えば、メイドさん達は少し曇った笑みを返した。



きっと彼女達からみたら、私は母親から嫌われる娘的な立ち位置だと思われているんだろう。

まぁ……悪く言われて愉快ではないけれど、今日のは全然我慢できるから私は気にしないことにする!

せっかくこれから、叔父様とご飯だし!

里帰りなんだ、少しでも楽しまなきゃ。



フンっと意気込んでいた所、「そう言えば……」とメイドさんの一人が呟いた。



「奥様、明日は真央様の誕生日ですからでしょうかしばらく前から機嫌がよろしいらしくて。向こう側で働いてるメイドも喜んでおりました。」

「ああ、そっか……。」




あの人の誕生日、明日だったっけ。