「………分かったろ。」



数秒の空白の後。

ふいと顔を背けて灰音はそう言った。




そして、こう聞くのだ。

「感想は?」と。




感想……?

取り敢えず率直な感想としては、えーと……えーと……


よく言えばスレンダー。

モデル体型。


悪く言えば〜……その〜……崖、というか、断崖絶壁というか。


服の上から見ても、あんまり無かったけど、触ってみれば本当にないと気づいた。




女の子に、容姿の感想は率直に言ってはいけないものである。




女の子はみんな可愛い。

だから褒めたくなっちゃうけど、褒めたつもりで言った言葉で傷つけちゃうことも無いわけじゃない。


オブラートに、包まなきゃいけないんだ。




「灰音。」

「うん。」

「灰音って、凄くスタイルいいのね。モデルさんみたい!」




できる限り、笑顔で言う。

この言葉は嘘じゃない。

胸の事には触れないけど、灰音の事は凄く素敵だと思ってるよ!






「あっはっはっはっ!!」




笑顔で言い切った途端、聞こえた大きな笑い声。

お腹を抱えて笑うのは、天真先輩だった。


「傑作ですね……!」と大爆笑だ。




その様子を見て、灰音は舌打ちをした。

さっきまで弱気な顔だったけれど、今は冷たい視線でキッと天真先輩を睨んでいて。



「うるさい、天。へこんでる時に大笑いされると死ぬ程蹴り飛ばしたくなるからやめて。」

「僕が蹴り飛ばしてあげよっかー?」



先輩の横にいた美琴が、「代理〜」なんて言って、お腹を抱えて笑ってる天真先輩をげしげし膝蹴りしている。






「え、と……“先輩”なんだよね?」


後輩から、あまりに酷い扱いを受ける先輩。



“お姉さま絶対主義”

“お姉さまは神様”

そんなカナ女から来たものだから、この状況を見て、驚くなという方が無理だよね。




先輩の大笑いが終わったのはそれからほんの少し後。

美琴は膝蹴りに飽きたらしく、大笑いが終わる頃にはもう行為をやめていた。