「いくら顔が女顔で警戒されないからって、お前は調子に乗りすぎだぁ。」


「何とでもいいなよ。南城君は羨ましいんでしょー。こうやって、ぎゅーって出来る僕が。南城君がやったらセクハラになっちゃうもんねぇ。」


「クッ……警戒されねぇって言う事は、意識されねぇって事じゃねぇか。」




口論が始まって。

あー、どうしてこの二人はいつも間に人を挟んで喧嘩するんだコノヤロー!と頭の中でちょっと悪口。


口には出しません。

出したら怖いもの。殺されちゃうもの。



そんな事を考えていた時だった。

シュッと、耳元に鋭利な音と少しの風を感じ。


パリンッ、となんだかよからぬ音が聞こえたのだ。





「……は?」

「……あ?」



二人のオーバーヒートしたやり取りを止めるほどの“それ”は、ただただ私に嫌なフラグを立てる。


ちょっと待って。

今すぐ近くで何か割れた音したよね。


この辺で割れる製品って、鏡しかなかったよね。




いやいやいやいや、まさか。

信じない、私は信じないよ。


今の割れたような音はきっと気の所為。

もしくは、何でも器用な夜白の声真似だ。

ほら、やっしーって何でも出来るから!

きっとパーティ用に習得してたりするよね!!




無理矢理理由をこじつけて、鏡台が割れてない事にした。

けれども私を現実に戻したのは、



「あーあ…………割れちゃった。」

「危うく刺さる所だったじゃねぇか。……いや、刺しに来たのか。」


苦笑いぎみの犬猿ボーイズの声で。



突然の事態に怯んだらしい美琴の腕は、私を開放した。

そんな私の目に一番最初に入ってきたのは……



「あああ!!」



鏡の部分にヒビが入った、さっきと姿を変えた鏡台だった。