明らかに異常事態の音な筈。

それなのに、私以外の四人は平然としている。

何故スルー?!



「何か凄い音したよ?!」




橘から離れて、私は音のしたであろう方向を見る。

今まで感動の再会で気が付かなかったけど、そう言えばあっちの方、ドタバタしてたかもしれない。




「今に始まったことじゃないっすよ。」

「お前らの総長が壊した分は、弁償ね。高いから覚悟しなよ。」

「なっ…………夜白は壊してない。」

「いや、あの中で一番破壊好きそうなの南城でしょ。」




“総長”“壊す”と言う単語。

そして……“北校に喧嘩を吹っかける大義名分”と言ったお兄ちゃんの言葉。

私はかなりの確信を持って、状況を理解したのだ。





ああ、今あそこで喧嘩が起きてるんだな、と。

しかもそれは北校VS三校なのかな、と。





私は知っている。

夜白が強い事。美琴が強い事。めぐが多分強い事。


もしかしたら、北校総長フルボッコ。

知り合い……それも、かなり仲がいいと分類される知り合いが、まだ見ぬ北校総長をフルボッコにしてるかもしれない。




あー……なんか、嫌な気分。




そもそも此処は“北校連盟”。

連盟の仕事は喧嘩する事。

だから、彼らのやってることは正しいのかもしれない。




“喧嘩に卑怯はない”と美琴はいつか言っていた。

だからフルボッコも、正しいのかもしれない。




連盟の世界は、お嬢様の世界とは違う。

だから私が口を出すことじゃないかもしれない。




でも、でも、でも。

何だか嫌なんだ。

恵が、夜白が、美琴が。

誰かに怪我をさせる事も、卑怯だと思われる事も。





何故かは分からないけど、心にモヤがかかったような気分だった。