「……初伊先輩、いいんですか?」

「なぁに?」

「名前っすよ、名前!あんなに美琴先輩の時は、名前呼ばないって頑なだったのに。」




南が北に負けたような気がします、と蛍君。


確かに……あの時は頑なだった。

総長と……いや、連盟高校とこれ以上関わるもんかって。




今も、それなりに関わりたくないって思ってる。

もう手遅れっぽいけれど。

でも、言い訳をさせてもらうなら灰音は女の子なんだ。

もしかしたら、初めて女の子のちゃんとした友達が出来るかもしれないと、ワクワクしちゃってるんだ。



灰音だって北校生?

分かってる。

でも「名前で呼んでよ!」と微笑む女の子のお誘いは断れないっていうか。

私、可愛い女の子のお願いに弱いんだなぁ。





「だって灰音は……」

女の子だから、別次元なんです!



そう続くはずの言葉は、ガシャーンと大きな音に遮られて。



「なっ、何事?!」



遠くの方で物凄い破壊音が聞こえたのだ。