出したらどうするとは言ってないものの、副総長の威厳からだろうか、皆は震え上がった。



「行ってくる。いい子だから、黙って待ってなさい。」





我侭な子供をあやす母親のように、お兄ちゃんは私を子供扱いして。

「待って!」と呼んだけど、彼は振り返ることなく部屋を出た。





バタンと閉まるドア。

それに向かって、私は走り出す。





「アオちゃん、待て待て待て!」

「頼む、アオちゃん!出すなって俺ら言われてんだよ。」

「吉良さんの命令なんて、聞かないわけにはいかないんだよ!」



だけどそんな簡単に部屋の外に出れる訳がない。

走り出した私は、ドアの前で南校ヤンキーズに通せんぼされて、立ち往生した。


……お兄ちゃんめ……。




南校ヤンキーズの気持ちは分かる。

そして、普通の人よりもお兄ちゃんに命令された方が聞かなきゃいけないと思うようになる気持ちもよく分かる。


あの人の命令は、反則技なんだ。




ブラコンでもなんでもないけど、私はお兄ちゃんより綺麗な人は見たことがない。

お兄ちゃんよりイケメンはいるかもしれないけど、綺麗では彼には誰にも適わない。今のところ。


それこそ笑わなければまるで人形。

全てのパーツが完璧に整いすぎていて、それはたまに恐ろしくなる程だ。



そんなお兄ちゃんに頼まれ事をされたら、大抵の人はすぐに首を縦に振っちゃうんだ。

彼は無意識に人を魅了しちゃうから。