「お兄ちゃんっ、私を北まで連れてって!」





私はお兄ちゃんの手をがばりと取り、じっと見つめて懇願した。

それはもう、じーっと、じーっと見つめる。


穴があくほど見つめる。




そうすれば、お兄ちゃんは……にっこりと笑ったんだ。


口角を上げ、目を細めて。


珍しい。本当に珍しい。

いつもは上機嫌でも微笑むぐらいなのに。



長年付き合ってきたけれど、その中でも1、2を争うくらいの満面の笑みに、いい返事を期待した。




「却下。」




だけれども、お兄ちゃんの口から出てきたのはその二文字で。

笑顔で振り回すなよ!と思わず拳を強く握る。






「北になんて、連れていかない。お前はここから出してあげない。」


「お兄ちゃんの……意地悪!っ、絶対行くんだから!」


「……どうとでも言え。」




頑なな私を呆れたのか、大きな溜め息をつく。

そして、「お前ら……」と南のヤンキーズ全員に語りかけるようにしてこう言ったのだ。



「初伊を此処から出すな。出したら…………いいな?」