でも、このままじゃ駄目なんだ。




烏丸初伊は幻だ。

私は花京初伊として、いつかはやらなきゃいけない事がある。




だから私には、時間がない。

烏丸初伊として、あとどれだけ笑っていれるかは分からないし、いつ花京初伊に戻らなきゃいけないかも分からない。




花京初伊になったら間違いなく皆と同じ所にはいられない。

花京初伊になったら、きっと涙を隠して貼り付けの笑顔と共に生きていかなきゃいけない。





いつか必ず来る地獄のはじまりは、五年後かもしれないし、来年かもしれないし、明日かもしれないのだ。




私は怖がり。

勇気もない。

迫り来る運命に、抗える力もないけれど。




いつか、烏丸初伊だった頃の日々を宝物に生きて行けるように、後悔はしたくないから


私は小さな一歩を踏み出すことにした。






『ウイ、小さな決意と小さな勇気と小さな愛情は何になるか、ご存知?』

『何になるの、フローレンス。』

『夢見るための、大きな翼になるのよ。』




おばあちゃんに……フローレンスに教えてもらった言葉を胸に、私は決意する。




恵に何があったか聞いてやるんだから。

もう避けさせないんだから!