「ひいっ……」



スプレーで所々、落書きされている歩道橋の下。


烏丸吉良に急所を殴られ、動けなくなっていた彼らは、突然現れた黒ずくめの集団に攫われた。


妙な薬を嗅がされたらしい。


暫く意識を失って、気が付くと歩道橋の下にいたのだ。





そしてそこにいたのは─────


表情のない、西校副総長、橘行成だった。





「君らが襲おうとしてたの、俺の大切な親友なんだ。一人じゃ何も出来ない間抜け共の癖に、本当むかつく。」



今日は月が綺麗だから、フードを被った彼の顔が良く見える。





「お前っ………その爪………っ。」


「お前にお前って言われたくないね。」



ガンっと行成は不良の一人の顔を足で蹴りつけた。





「黒い爪の女は……男だったのか?!」

「橘行成……!なんで“黒爪”が西の副総長なんてしてるんだよ!」





「めぐの友達だからじゃない?」



ガンッ ボキッと次々に響く破壊音。



「いつもいつも思うけどさ、これ、黒い爪の一言で済まされたくないんだけど。アートじゃん。」



行成は、自分の爪をじっと見る。

黒地のベースに星やらラインストーンやらが散りばめられていて。

線の細い行成の彩られたその手を見たならば、十中八九女だと勘違いするだろう。




「あれ、もう一人しか残ってないの?」



ヒイッと怯える最後の一人になってしまった男に行成は携帯を出すように促した。



投げるように不良は携帯を行成に差し出す。




「はい、どうも。……あ、俺の正体は、ぜったーいに秘密ね。」




コクコクと不良が頷いたのを見届けて、行成は男に手刀を入れる。


その表情は、やはり冷たいものだった。






「とうま……あ、総長で入ってるかな。……あった。」


行成は、ピースにした自らの手と血を流して倒れている不良達を共にフレームに入れ、それを東麻美琴────東の総長に送り付けた。



titleは、報復。