side恵



俺は初伊の手を掴んで暗い夜道を歩いていた。




「恵……ごめんなさい。」



きゅっと、手に込められた力が強くなる。

振り向かないでも、分かるよ。

きっと君は今涙目だから、振り向かないであげる。





「変なの。……初伊が謝るの?悪くないでしょ。」

「迷惑かけたもん。」




迷惑だなんて、思わないでよ。

俺は初伊の側で、初伊を感じる事が一番の幸せで生きている意味なんだから。




でも……嫉妬してしまう。

初伊に近づけば近づくほど、もっと側にいたいと満足する事はない。




他の誰かが、初伊の一番になるなんて、嫌だ。


それが例え、お兄さんでも。




「……良かったね、お兄さん来て。」


「うん?」



「本当は俺、迎えに来なかったほうが良かった?烏丸吉良と一緒にいたかったんでしょ。」




……俺は馬鹿か。

初伊の言葉は想像出来る。

“そんな事ないよ”だろう。

君は人を喜ばせるのが上手だから。



それが分かってて、自分を肯定して欲しくて、わざと聞いた。


醜い嫉妬。