ふと恵を見ると、険しい顔で。




「初伊、怪我は?」

「ううん、大丈夫。」


「良かった……!」




恵にぎゅっと抱きしめられる。


その瞬間、うおおおおーーーっという雄叫びが聞こえた。




「あおちゃん、二股?!不倫?!」

「袴田、メモしろ!“あおちゃんはエロい!”」





「何故そうなった訳?!健全よ?!」



全力で否定です!

漫画でも、キスシーン以降はチラ見して飛ばしてるレベルよ?!




「初伊。」


名前を呼ばれて振り返ると、恵の凄く綺麗な笑顔があった。 


「初伊、帰るよ。これ以上こいつらと話してると、ここの不良達怪我させちゃうよ。」




部屋が一気にヒヤリと寒くなる感覚。


これは恵がなかなかに不機嫌だと言うこと。





「うん、分かった。」


ここは大人しく話を聞いておこう。




「吉良、お姉ちゃんが会いたがってる。たまには家に帰ってきてね。」



吉良に伝える事だけ伝えて、背中を向けて歩き出す。


だけどパシッと腕を掴まれた感覚があって、振り返ると妖しく笑った南城君で。






「初伊、またな。」


「お邪魔しました。……?」




なんか、少し悪い予感がする。


その予感と南城君の妖しい笑顔が結びつくのはもう少し先のこと。