「凄くお似合いですよ。」




店員に選んでもらったセーラー服風の襟のついたワンピースを着て、黒髪のウィッグを装着。

うん、僕も凄く似合ってると思う。

ぶっちゃけ、可愛いと言われる類の女子よりもずっと可愛い。




代金を払い、その店を後にした。



道を歩けば、道行く学校帰りの男子達が頬を染めてきて。




じろじろと視線がうざったかったから、心の中で

「お前達が可愛いと思ってるのは男だよ、バーカ。」と

毒を吐いてストレスを発散した。





自身の住むマンション、“ソル”にようやく到着した。

いつもは静かなそこには、今は信じられない位の人だかりが出来ていて。





「あの、どうかしたんですか?」



大方、遊佐一味が暴れてるんだろうと思いつつも、人だかりの後ろの方にいた男に話を聞く。

そいつは、僕を見て頬を染めた後に、コホンと咳払いをして。



「なんか、女の子がヤンキーに絡まれてるらしくて。」



大変ですよね、と人事のようにそう告げた。





物凄く、嫌な予感がする。


ヤンキーに絡まれてる女の子の特徴も何も知らないし、

その子だって確証はないけれど、

兎に角嫌な予感がした。



「え?あ、危ないですよ!?」




人混みを掻き分け、前に進む。

さっきの男の焦る声が、遠くで聞こえた。



なんだなんだと色んな人に注目されるけれど、そんなの全然気にならなくて。

ようやく目の前に人が居なくなって、遠くに見えたのはカラフルな頭。



僕は目がいい。


だから、そのヤンキー達の中で一際体格のいい奴の顔が良く見える。

そいつは紛れもなく遊佐で。




そいつが絡んでるのは、初伊ちゃんだ。