だけれども、初伊ちゃんは“超”がつくほどのお人好しらしい。

あんな目に遭わせた張本人を助けようとして、更には家で看病するとか言い出す始末。




……いやいやいや、ちょっと待とうよ!

吉良君の住処になんて行けるわけないし、男をホイホイ挙げちゃっていいの?!

馬鹿なの?!

いや、違うか……危機感が足りないって言うのか……。

これがもし普通の男だったら、襲われちゃうからね?







初伊ちゃんは、海みたいに静かな色の瞳を持っているけれど、笑うと太陽みたいに暖かい。



「ありがとうの方が嬉しいよ。」



キラキラ、キラキラと輝くその子に抱くこの感情は、

憧れのような、羨望のような気持ち。




手を伸ばして、触れてみたい。





初伊ちゃんに触れば、僕の汚い心も全部消してくれるんじゃないかって、

そんな馬鹿な事を考えて、近くにあった初伊ちゃんの肩に顔を埋めてみたら……




「く、すぐったい。」




さっきまで、まるで雲の上の違う存在みたいに感じてた初伊ちゃんが、急に普通の女の子に見えた。


凄く可愛らしくて、つい意地悪しちゃったよね。








いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

窓の外の景色が茜色に染まりつつある。




眠った事で、体も少し楽になった。

このまま此処にいることも出来ないし、家に帰る事にしよう。

きっと家の前には遊佐一味が待ち構えてるだろうけど、ほら、僕“可愛い”から。

女装とかしたら、間違えなく気がつかれないで奴らの前を普通に通れると思うんだよね。