逃げないと。

遊佐は今、勝利を確信し、自分に酔っている。




今なら出来る。

相手の意識を一瞬ずらして、その隙に逃げよう。




「あ。」

「あ"?」

「ゴキブリ。」

「ギョエア?!」




遊佐の意識がずれたのは、一瞬どころじゃない。

飛び上がって「何処だ?!」と震えている。






あそこ、と入口を塞いでるヤンキー達の方を指させば、ヤンキー達は皆そっちに意識を向けた。







一旦外に出てしまえば道も多く、身を隠すのには苦労しないはず。





ガッシャーンッッッ!!




「あ?!な、な、なにやって……!!」




窓に飛び込んだ僕は、そのまま下に落下した。

遊佐の驚く声が聞こえたのは、“二階”から落ちたからだろう。





二階から落ちて、大怪我をすると思った?

するわけないよね。




なんなら三階からでも落れるよ。

千鳥さんに、教えてもらったからね。







窓の外を、口を開けてみている遊佐達。

挑発するようにニヤリと笑って、彼等の前から走り去る。





「おい!追えっ!!」




そうして、彼等と僕の鬼ごっこが始まったんだ。