「僕ね、嫌いなんだよね……。可愛いって言われるのがさぁ。」





お腹を抱えて僕を睨む遊佐の髪を掴み上げる。

さっきとは、立場がまるきり逆転してるね。




遊佐の瞳には、怒りや憎しみだとかの感情の他に、明らかに“恐れ”が見える。





ねぇ、僕、その瞳は好きだよ。

怖くて怖くて仕方ないんでしょう?

自分が痛めつけられるのがね。





「ふふっ……御要望に答えて、生きてるのを後悔する程痛くしてあげるっ。」




「ひいっ!」と声が聞こえた気がする。

微笑んで、拳を握りしめた時だった。




ガン、と後ろから衝撃が走ったのは。






「っ……!!」






突然の衝撃に、生理的に脳震盪を起こした。


背後から、バットで殴られたらしい。


普段なら気付かない事なんてないけれど、今日は熱のせいで頭が冴えず、気付けなかった。


何と言う誤算。






「はっ……“生きてるのを後悔する程痛めつける”だぁ?こっちのセリフだよ!」






揺れる視界の中、形勢逆転を喜ぶ遊佐の姿だけが鮮明に見えた。






あ……これは、やばい、かも。

敵前逃亡なんてしたくないけれど、きっとこのままだったらやられる。