「女みてぇな可愛いツラしてやがる美琴チャンには、総長なんてこなせる訳ねぇんだよ。……今なら泣いて謝罪すれば、ボコるの、やめてやっても構わないぜぇ?」




「なぁ、お前ら」と遊佐は後ろを振り返った。

そうすると扉の向こうから、十人余りの獅東生が現れて。





なるほどね……

獅東生は“獅東男子校”から総長を出したいらしい。

そうすると、僕が邪魔だもんねぇ。






「どーしたぁ?ビビって、声も出ねぇのかぁ?」



黙っていれば、調子に乗った遊佐はそんな事を言う。

更に周りのヤンキー達も彼に同調して笑う。






「おい……俺に総長を譲ると言え。」



しゃがみこむ僕の髪をぐいと引っ張り、目線を無理に合わせようとする遊佐。

その行為の意味は、怯える僕の顔をみたいからだろうね。








笑止。


てめぇ如きに怯える訳ねぇだろうが。







「遊佐。あんたは、重大なミスを冒したねっ。」




敢えて、笑いかける。

十人中十人が可愛いと認めるであろう、母親譲りのこの忌々しい顔で、笑いかけてあげる。




そうすれば、遊佐の顔はポッと赤くなった。

男相手に赤面とは、余程女に飢えてるらしい。






「重大な、ミス……?」

僕の言葉を心ここにあらずな状態で反復する遊佐に、僕はさっきよりも更に綺麗に笑いかけてやった。


後ろのヤンキー達からの、感嘆の溜息が聞こえた。






「あんたのミスは、僕に“女みたいに可愛い”って言った事だよ。そうしなければ、無抵抗の僕をボコって総長になれたかもしれないのにね。あ、でも無理か。熱ある僕にも敵わないほど、あんたは弱いからねっ!」


「っ、てめぇ……!!」





怒りのせいで真っ赤になっている遊佐の、腹に思いっきり拳を入れる。

普段の半分くらいしか力は出ないけれど、それでも威力は十分だったらしい。

遊佐は、かなり顔を歪ませて痛がっている。