「何やってんすか、もー。」と呆れ声を出して世話を焼いてくれる蛍の態度が、あの夢の後だからかもしれないけど、少しくすぐったかった。





蛍は一緒にいて楽だ。


スカウトした時はブレーンとして活躍してくれればいいかなってくらいにしか思っていなかったんだけど、予想外に物怖じせず、使える奴だったのは嬉しい誤算だよね。





喧嘩は弱いけど、

────多分、蛍は僕を裏切らない。




だから安心して背中を預けられるんだ。







「ほら、布団持ってきましたから、薬飲んで寝てて下さい!」

「うん、ごめん。」






世話焼き女房みたいな蛍に勧められるがまま横になったのは、本当に具合が悪かったからだ。


長年の勘から言うと、多分38度は超えているだろう。






「何かあったら起こしてね……。」

「りょーかいっす。」





そうして僕は深い眠りについた。



何かあったら〜なんて言ったけれど、

いつも通りの何も変わらない日常。





事件なんて、起こらないと思ってた。








ガタンッ

ドンッ

ガッシャーンッ!



大きな物音と騒ぎ声で目が覚めた僕は、その時状況を理解していなかった。

東校生が揉め事を起こした位にしか、考えていなかったんだけれど。





「東麻ぁ!総長交代の時が来たぞぉ!!」




荒々しく扉を開け、ニヤリと笑う遊佐の姿を見て、残念ながら今何が起きているのかを悟ってしまった。